研究概要 |
高齢マウスとして22ヶ月齢のAM遺伝子改変マウス(Old AM-KO)およびその同腹子、コントロールとして12週齢のAM遺伝子改変マウス(Young AM-KO)およびその同腹子を準備し、それぞれにおける肺機能、組織学的変化を検討した。まず肺機能については、Old miceにおける残気量(RV), 残気率(RV/TLC)の有意な増加が認められた。一方、組織学的な検討の結果、平均肺胞間距離(Lm)がOld miceにおいて有意に長く、肺胞面積や破壊指数(DI)については有意な差を認めなかった。いずれもAM遺伝子改変の有無とは関連を見出せなかった。以上の結果から、高齢化により、肺の弾性収縮力が低下してエアートラッピングを生じさせる結果、残気量の増加やLmの増加を来たしているが、肺胞の破壊という点では高齢化の影響は少ないものと判断された。つまり、高齢化のみでは肺は形態学的に肺気腫の形態を示さず、むしろ末梢の気腔のみが拡大した「老人肺」の所見を示すことが示された。この機序について、肺胞上皮細胞のapoptosisがOld miceにおける気腔の拡大に関与している可能性を考え、TUNEL染色による免疫組織化学的検討を行った。しかし、Old miceとYoung miceの間で有意な差は得られなかった。したがって、今回のマウスモデルにおいてはapoptosis以外の機序で「老人肺」気腔の拡大が生じることが間接的に示された。肺胞の破壊を伴わない気腔拡大の原因としては、何らかの原因によるauto PEEPの存在などが想定されるが、詳細については今後の研究課題となった。
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