研究概要 |
肺炎症性疾患・気管支喘息の病態形成におけるTRPチャネルをはじめとするCa^<2+>チャネルの役割を検討した。 培養ヒト気道平滑筋細胞を用いた実験で、筋小胞体Ca^<2+>ストアのCa^<2+>含有量を感知する分子STIM-1をこの細胞が発現していることを見出した。更に、STIM-1siRNAを細胞に導入した実験で、STIM-1が筋小胞体Ca^<2+>ストアにより活性化されるCa^<2+>チャネルを介したCa^<2+>流入を制御していることを見出した。このことから、気管支喘息における気道平滑筋収縮、気道平滑筋細胞増殖において、STIM-1の活性化が関与している可能性が推測された。 培養ヒト肺微小血管内皮細胞を用いた実験では、prostaglandin E_2(PGE_2)刺激および繰り返しのストレッチ刺激がIL-8産生を亢進することを見出した。これらの反応はARDSの肺炎症病態に関与すると推測される。本細胞にはTRP-V2, V4, C6などのTRP発現を認めたが、これらIL-8産生はTRPチャネル阻害剤Gd^<3+>,rutheniumredなどでは抑制されず、p38 MAP-kinase阻害により抑制されたことから、TRPチャネル非依存性にp38 MAP-kinaseにより制御されていることを見出した。 以上の知見から、気道平滑筋細胞の多くの機能はCa^<2+>チャネルによって制御されており、TRP遺伝子が細胞内シグナルの活性化を介して気管支喘息の病態形成に関与している可能性が推測される。肺微小血管内皮細胞機能におけるTRPチャネルの意義、ARDSの病態生理における役割については更なる研究課題である。
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