慢性閉塞性肺疾患の病態に酸化ストレスの関与が指摘されている。酸化ストレスを受けると細胞内のタンパク質で代謝回転の遅いものはさまざまなタンパク質修飾を受ける。その中で特にアスパラギン、及びアスパラギン酸の異性体化に着目した。異性体化を受けたタンパク質は高次構造の変化を受け、機能しないタンパク質として細胞内に残るかあるいは速やかにプロテアソームで修理される。細胞内に残存した場合はタンパク質の凝集を伴い小胞体ストレスとともに多くの炎症性サイトカインの産生を誘導する。しかしながら異性体化したタンパク質を修復する酵素(PCMT1)が存在し肺胞上皮細胞の機能維持に大きく貢献していると考えられる。我々はこの酵素の遺伝子の遺伝子多型に着目した。この遺伝子のプロモーター領域は組織特異性のない構造をしており、むしろ3'noncoding領域の調節によってmRNAの発現量を調節していると推論した。そこで3'noncoding領域の塩基配列を調べ2種類の新たな多型(1062番、1289番)を見出した。この周囲の塩基配列はmicroRNAと相互作用する可能性のある部位で一塩基の違いはmRNAの安定性の違い、PCMT1酵素の発現量に大きく影響し、異性体化タンパク質の増加につながると考えられる。 また、COPD患者の肺組織組織の採取に関しても倫理委員会の承認を得て、健常肺とともに、スパラギン酸異性体化蛋白の検出を行なっている。
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