研究課題/領域番号 |
22590842
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
山内 広平 岩手医科大学, 医学部, 教授 (20200579)
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研究分担者 |
小笠原 正人 愛媛大学, 医学部, 准教授 (00325367)
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キーワード | D体アスパラギン / 異性化蛋白 / COPD / 酸化ストレス |
研究概要 |
蛋白質を構成するアミノ酸の中でアスパラギン酸の異性体化が加齢、酸化ストレスに伴う疾患で指摘されている。アスパラギン酸が異性体化(D-体アミノ酸)されると蛋白質の高次構造が障害され、本来持つ機能が果たせなくなる。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の誘因、発症に酸化ストレスが関与し、そのために蛋白質が障害を受ける可能性がある。そこでCOPDの患者から同意のもとに肺組織を一部採取し、発現蛋白質の変動が認められるもの、さらに、D-アスパラギン酸特異的なエンドペプチダーゼ(Paenidase I)を用いて2次元電気泳動と組み合わせることによりD-アスパラギン酸を含む蛋白質の同定を行った。COPD患者5名、その他の疾患6名の解析を行い、paenidase I感受性蛋白質4種類を同定した。それらは、serum amyloid P component(SAMP), Prohibitin, Gluthatione S-transperase p1(GSTP1), Peroxiredoxin-2(Per-2)からなり、酸化ストレス応答の関与するGSTp1、Per2も含まれていた。コントロール群ではD-asparatic acidの含まれる割合が~7%程度であったが、COPD群では27.2%~43.9%であった。GSTp1、Per-2の発現それ自体は変化なく、蛋白質にD-Asparatic acidが含まれることを考慮すると、酸化ストレス適応不全が起こっていると考えられた。D-Asparatic acidを含む一部のAsparatic acid異性体は修復酵素PCMT1でL-Asparatic acidに戻るが、コントロール群、COPD群でPCMT1の発現に有意差が認められなかった。従って、COPDで起こるAsparatic acidの異性体化は不可逆的な変化が推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COPD患者肺に特有の異性化アスパラギン酸を含む蛋白が同定された。
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今後の研究の推進方策 |
1)異性化アスパラギン酸を含む蛋白に対する抗体がCOPD患者血清に存在するかどうかを調べる 2)異性化アスパラギン酸を含む蛋白による健常者及びCOPD患者末梢リンパ球活性化作用について調べる 3)各蛋白質に含まれるアスパラギン酸は数個含まれるので。今後は異性体化蛋白質のD-アスパラギン酸の位置を明らかにし、D-アスパラギン酸特異的な抗体を作成し、COPDに対する質的な評価を行う。
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