C57/BL6マウスを用いて気道内に好中球エラスターゼを反復投与して杯細胞化生モデルを作成し、ムスカリン受容体阻害薬(tiotropium)の吸入により抑制されるか、病理組織および気管支肺胞洗浄の細胞解析とELISA法による炎症性メディエーターの解析を行った。またムスカリン受容体(M_3)の発現を病理組織の免疫染色により検討した。In vitroの実験ではNCI-H292細胞を用いてムスカリン受容体の発現を証明し、エラスターゼ刺激によるムチン(MUC5AC)産生に与えるムスカリン受容体阻害薬の効果も検討した。その結果、エラスターゼ誘起性杯細胞化生と気道周囲の炎症細胞浸潤はtiotropiumで抑制され、また気管支肺胞洗浄液中の好中球、好酸球細胞数の増加もtiotropiumで抑制された。また気管支肺胞洗浄液中のKC、ロイコトリエンB4の増加はtiotropium投与により有意に抑制された。さらに気道上皮細胞、炎症細胞にM3受容体の発現が認められたが、tiotropiumの投与により発現が低下した。エラスターゼ誘起性杯細胞化生が確立した後にtiotropiumを投与しても、杯細胞化生の抑制効果が認められた。In vitroの検討ではNCI-H292細胞はM3受容体を発現しており、MUC5AC産生はエラスターゼ投与により増加したが、tiotropiumの投与により抑制された。以上の結果から、ムスカリン受容体阻害薬tiotropiumはエラスターゼ誘起性杯細胞化生を炎症の抑制と気道上皮細胞への直接作用により抑制することが明らかになった。
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