研究課題/領域番号 |
22590845
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
木田 厚瑞 日本医科大学, 医学部, 教授 (90142645)
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研究分担者 |
石井 健男 日本医科大学, 医学部, 講師 (90445750)
村松 正明 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (50230008)
三重野 牧子 自治医科大学, 医学部, 助教 (60464707)
沢辺 元司 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター, 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30196331)
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キーワード | 喫煙 / 肺気腫 / ニコチン受容体 / 遺伝子多型 / 肺癌 / 肺線維症 |
研究概要 |
1.COPD群及び対象群の当研究への登録及びゲノムDNA抽出:日本医科大学(担当:木田、石井)は、COPD及び対照群約450症例のデータとゲノムDNAサンプルを蓄積。東京都健康長寿医療センター(担当:沢辺)も、新規の病理解剖症例の臨床情報、病理情報のデータベース登録、ゲノムDNAを抽出。 2.遺伝子型の決定及び臨床データとの相関解析:日本医科大学(担当:木田、石井)のサンプルについて、CHRNB4-CHRNA3-CHRNA5に属する15個のTag SNPの遺伝子型を決定、複数のSNPにて肺気腫の程度(LAA%)との有意な関連、別のSNPにおいては喫煙歴との関連のある傾向が見られた。2011年5月に行われたアメリカ胸部疾患学会(ATS)にて発表。LAA%と関連のあるSNPがCHRNA3,5の発現量と関連があることをNCBIのデータベースを用いて検証。CHRNA3,5の肺由来細胞における機能解析を進行中。日本医科大学のサンプルにおいて肺気腫と関連が見られたCHRNA3遺伝子の2種類の多型について健康長寿医療センターの1536症例において呼吸器疾患との関連があるか検討した(担当:村松)。しかしながら、肺気腫と統計学的に有意な関連は見出されていない(rs3740373;OR=1.07,95%CI;0.73-1.58,P=0.73/rs660652;OR=0.88,95%CI;0.58-1.36,P=0.57)。現在、CHRNA3遺伝子の他のTag SNPの解析を検討中。 3.遺伝子のハプロタイプと臨床データとの相関解析:上記のすでに決定された遺伝子型をもとに、CHRNB4-CHRNA3-CHRNA5のクラスターにつきハプロタイプを決定、日本医科大学のサンプルでハプロタイプとCOPDとの関連を検討、統計的に有意な差みられず。肺気腫(LAA%)との関連も解析中。(担当:三重野) 4.ニコチン受容体遺伝子の肺における発現:ニコチン受容体の遺伝子型と肺気腫の程度が喫煙歴と独立に関連していることから、同遺伝子の機能を調べるべく肺における発現を免疫病理学的に検討した(担当:沢辺)。肺気腫症例においてCHRNA3は気管支上皮・肺胞壁・肺胞内マクロファージに発現を確認した。気管支上皮では内腔側にリング状の特徴的な陽性所見を認めたため、免疫電顕を行ったところ、線毛の基底小体に強い陽性所見を認めた.なお扁平上皮化生部位では陽性所見を認めなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CHRNB4-CHRNA3-CHRNA5のニコチン受容体クラスターにおける遺伝子多型と肺気腫との関連について、一方の母集団において有意な関連を見いだせている。また、同遺伝子多型の遺伝子発現における機能を検証済みである。さらに、同遺伝子の肺由来細胞における役割を、siRNAを用いたknock-down法により行うための方法はすでに確立しており、来年度中には結果を得て投稿は可能と考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
COPD群及び対象群の当研究への登録とゲノムDNAの抽出を、日本医科大学及び東京都老人医療センターで行う。遺伝子型決定も引き続き行い、日本医科大学のサンプルについて肺気腫と有意相関があったニコチン受容体群(CHRNA5-CHRNA3-CHRNB4)のSNPについて健康長寿医療センターサンプルにて再現性の検討、他の喫煙疾患との関連を検討。CHRNA3,5の遺伝子発現を肺由来細胞でsiRNAなどで制御し、同遺伝子の機能解析を行う。また、CHRNsの肺における実際の発現を免疫染色などにて検討する。
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