研究概要 |
卵白アルブミンで感作したマウスを麻酔下にボディーボックス内に固定した後、人工呼吸器で強制換気し、気道抵抗を測定した。サリドマイドは抗炎症作用を有することが判明し、多発性骨髄腫、慢性関節リウマチの治療薬としてその可能性が検討されている。サリドマイドを前投与すると、抗原曝露後のメサコリンによる気道抵抗の上昇(気道過敏性の亢進)は有意に抑制された。抗原曝露後に気管支肺胞洗浄液中に著明に増加したサイトカイン(IL-4, IL-5, IL-13, TNF-α)はサリドマイドの前処置により用量依存性に抑制された。さらに、肺の組織学的検討では、抗原曝露で生じた杯細胞過形成、好酸球の気道周囲への浸潤はサリドマイド投与により有意に抑制された。これらの結果より、サリドマイドは気管支喘息の基本的な病態に関与する気道炎症、および気道過敏性亢進の改善に有用である。 卵白アルブミンで曝露した後に気管を切除し、気管平滑筋の切片を作製した。Fura-2で処理した後に浴槽内に懸垂し、等尺性張力とF_<340>/F_<380>(細胞内Ca^<2+>濃度の指標)を同時に記録した。アレルギー反応により肥満細胞から放出されるスフィンゴシン1リン酸(S1P)は気管支喘息のメディエーターとして作用する可能性が示されている。切片をS1Pに暴露した後、イソプレナリン(β_2アドレナリン受容体刺激薬)の弛緩効果はF_<340>/F_<380>の値を変化させることなく著明に減弱した(Ca^<2+>感受性亢進)。Rho-kinase阻害薬であるY-27632の存在下では、S1P曝露後のβ_2アドレナリン受容体刺激薬に対する耐性化は有意に抑制された。RhoA(small G protein)、そしてその標的分子であるRho-kinaseを介したCa^<2+>感受性が重要な役割を果たしている。RhoA/Rho-kinase系は気管支喘息治療の標的蛋白であると推察される。
|