研究課題
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)における血栓内膜摘出術検体より分離した肉腫細胞は、筋線維芽細胞に比し悪性疾患特異的遺伝子が著名に上昇していた。また接着因子に関連する遺伝子が顕著に低下していた。現在これらの遺伝子による蛋白発現の有無をWestern blotting解析にて確認中である。またこれらの遺伝子が、形質変化に寄与するかどうかを今後アデノウイルスベクターなどによる遺伝子導入あるいはsiRNAなどによる遺伝子knock downを行い確認する。また、同細胞を免疫抑制マウス尾静脈より静注しその進展経過を確認すると、静注1週間後より同細胞は肺動脈壁に生着し、肺動脈内膜に沿う形で進展していった。しかし、上皮系の肺癌細胞(A549)は、同条件にて肺実質腫瘍や多発多臓器転移を生じたが、肺動脈血管内での進展は見られなかった。以上より、肺動脈原発血管内肉腫(intimal sarcoma)の進展メカニズムを解明するため、同肉腫細胞とA549細胞の遺伝子発現をPCRアレイにて確認した。その結果、やはり接着因子関連の遺伝子が多数変化しており、これらの遺伝子が間葉系悪性細胞と上皮系悪性細胞の病態の差異に関与すると考えた。そのため、現在Western blottingによる蛋白発現と、siRNAによる遺伝子抑制実験を施行中である。また、現在CTEPHにおける血栓内膜摘出術検体より血球系の細胞も分離しており、それらの細胞は非常に高い増殖能力を有している。これらの細胞中に骨髄単球系細胞や造血前駆細胞が確認されれば、それらの細胞をmicro beads法やflowcytometry法により分離し、増殖コントロール後分化誘導をかけ、再生医療への応用を確認する予定である。
2: おおむね順調に進展している
肺動脈原発血管内肉腫の発症機序解明につながるデータは蓄積されている。造血幹細胞分離・臨床応用への可能性については、現在細胞分離段階であるため、今後のさらなる解明が必要である。
今後は、肉腫と上皮系癌の差異を生じる遺伝子や蛋白の確認、および骨髄単球系細胞や造血前駆細胞の分離を施行する。現状のプロトコールにて遂行可能と考える。
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