研究概要 |
自己免疫性肺胞蛋白症(aPAP)は、GM-CSFに対する自己抗体により生ずる.本症に対して,GM-CSF吸入多施設共同臨床試験が行われ,重篤な副作用なく62%の奏効率が得られたが,不応例もみられた.本研究ではGM-CSF吸入治療の効果を予測できる因子の発見を目的として,本年度は自己抗体の推移を中心に解析を行った.本邦でのGM-CSF吸入治療研究では治療前後で血清中の抗体濃度に有意差は無かったが,気管支肺胞洗浄液(BALF)では2005年のパイロットスタデイでBALF中のGM-CSF抗体濃度の減少が観察された.そこでGM-CSF吸入治療によるaPAP患者のBALF中のGM-CSF抗体濃度の減少が,抗体産生の減少によるのか,肺内のGM-CSF抗体の除去の回復によるのかを調べるため,GM-CSF吸入治療研究(吸入総量10.5-21mg,吸入期間12-24週)に参加した19例のaPAP患者から得たBALFをretrospectiveに検討した.BALFは,GM-CSF吸入治療の直前と直後に,各患者の同一気管支から採取し,高反応群(ΔAaDO2≧13mmHg,n=10)と低反応群(ΔAaDO2<13ihmHg,n=9)に分けて比較した.BALF中の総蛋白量,SP-A,総IgGは高反応群では有意に低下したが(p<0.05),低反応群では変わらず,高反応群で肺胞マクロファージによるサーファクタント物質の除去が改善したことが示唆された.BALF中のGM-CSF抗体濃度とGM-CSFに対する中和能も,高反応群で有意に減少したが(p<0.05),全IgGに対するGM-CSF抗体の比率は変化がなかった,aPAP患者のGM-CSF吸入治療後のBALF中のGM-CSF抗体濃度の低下は,抗体産生の低下によるのでなく,肺胞腔のクリアランスの改善によることが示唆された
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