研究概要 |
抗GM-CSF自己抗体によりおきる自己免疫性肺胞蛋白症(aPAP)に対して,GM-CSF吸入多施設共同臨床試験が行われ,重篤な副作用なく62%の患者で奏効したが不応例もみられた。本研究ではGM-CSF吸入治療の効果を予測できる因子の発見を目的として,本年度はGM-CSF吸入が本症患者の気管支肺胞洗浄液(BALF)中のバイオマーカーに与える影響を調べるため,94種類のバイオマーカーについてマイクロアナライトシステムでGM-CSF吸入治療研究(吸入総量10.5-21mg,吸入期間12-24週)に参加した10例のPAP患者のBALFを調べた.10例中5例がGM-CSF吸入治療によく反応した高反応群(ΔAaDO2≧13mmHg),5例が低反応群(ΔAaDO2<13mmHg)であった.62種類のマーカーが測定可能な範囲で,17種類が吸入治療により増加したが有意差はなく,他の45種類では吸入治療による変化はなかった.9種類のマーカーで吸入治療前の値がAaDO2の改善と相関を認めた.このうち相関計数の高かったIL-17(0.756)とCA125(0.731)についてaPAP肺における局在と産生を確かめるため,aPAP患者肺組織の免疫染色を行い,肺胞マクロファージと肺胞内のリンパ球様単核球でのIL17の発現と,繊毛上皮でのCA125の発現を確認した.さらに高反応群10例,低反応群9例のBALFのELISAでは,治療前IL17は高反応群では低反応群に比べ高い傾向があり,治療後に高反応群で有意に増加した.CA125も同様の結果であった.気管支喘息でも肺胞マクロファージがIL-17を産生することが報告されており,IL-17はマクロファージ機能に関わる可能性がある.またCA125が繊毛上皮に発現することから,繊毛上皮が下気道のサーファクタントクリアランスに関与する可能性が考えられた.
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今後の研究の推進方策 |
進行中のGM-CSF吸入治療患者データの解析を継続する.臨床所見,血清マーカー,気管支肺胞洗浄液,BAL細胞の各因子について治療中の経過および治療効果・治療後経過との比較に加えて,治療終了後の予後調査を行い,その結果も含めて解析する.また有望な候補因子について肺胞マクロファージや気管支上皮細胞の培養系でのin vitroでの解析を検討する.
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