研究概要 |
【背景】 高地肺水腫の発症機序は十分に解明されていない。本症における遺伝的素因の関与を調べるため、全ゲノムに亘るケースコントロールスタディを行った。 【対象と方法】 日本アルプスで発症し、信州大学医学部附属病院へ搬送された高地肺水腫患者53例と、海抜3,000m以上の山岳に登山経験があり、高山病症状を認めなかったエリート登山家67例を対象とした。両群の血液検体よりQuickGene-800(FUJIFILM)を用いてDNAを抽出し、400個のマイクロサテライトマーカーを用いて、PCR法による遺伝子解析を行った。 【結果】 9つのマーカー(D1S468, D1S2697, D1S2785, D4S405, D5S424, D6S257, D12S2638, D16S3103, D21S263)が高地肺水腫の疾患感受性と、3つのマーカー(D1S230, D14S283, D22S280)が疾患抵抗性との関連を認めた。これらは、肺胞構造の維持機構や細胞膜の塩素イオンチャネル、内因性蛋白などと関係するマーカーであった。 【結語】 高地肺水腫の疾患感受性あるいは疾患抵抗性に複数の遺伝子が関連し、これら遺伝子の相互作用により発症が規定される可能性が示唆された。
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