今回のエンドトキシン(LPS)肺損傷の修復過程に着目した研究で、LPSプライミング後に再投与LPS投与により、プライミングがないLPS肺損傷モデルに比べて炎症からの修復が早期に収束することが明らかにされた。その病態において、従来より言われていた炎症性サイトカインであるTNF-α産生に関わるNF-κB遺伝子の抑制だけではなく、抗炎症性サイトカインであるInterleukin (IL)-10の再生亢進が病態に関わることをIL-10ノックアウトマウスに対してのLPSプライミング実験の検討から明らかにされた。また、野生型マウスにおいて、LPSプライミング後に肺胞マクロファージをクロドロネイトの経気道投与により肺内より消失させると、LPSプライミングの効果はなくなり、その修復過程においてはプライミングを行っていないマウスと同じ経過となった。また、炎症性サイトカインであるTNFαの産生は、肺胞マクロファージを肺内より消失させた群で減少は認められなかったが、IL-10の産生亢進は認められないことが分かった。この結果から、LPSにより肺胞マクロファージがプライミングを受けることで、次の刺激において、肺胞マクロファージからIL-10が余剰に産生されることで、病態修復の主をなすことが明らかにされた。また、TGFβの産生に関しては、LPSプライミングとは関係が認められなかった。制御性Tリンパ球もLPSプライミングにおける肺損傷修復には関与していなかった。将来的に、LPSプライミングされた単球を肺内へ直接移植を行うことで、炎症からの修復をもたらすことが期待できる。
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