研究概要 |
23価の肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(pneumococcal capsular polysaccharide vaccine:PPV)はT細胞非依存抗原であるため,その効果は限定的である.このため肺炎球菌ワクチンの効果を高める種々の解決策が模索され,B細胞が未熟な乳児では7価の蛋白結合型や肺炎球菌蛋白質ワクチン抗原の導入が計られている.一方,成人では現行の安全性が確立しているPPVの投与方法を工夫し効果的な抗体価上昇を得ることができれば,現実的な対応と考えられる. このため22年度は,マウスを対象としてPPVを経鼻投与した場合の抗体価上昇効果を,皮下接種の経路と比較し,抗原特異的IgAの誘導が期待できるか検討した.BALB/cマウスでの接種の方法は以下のとおりである. Subcut群:剃毛後のマウス腹部でPPVを11.5μg/kg皮下接種,これをSubcut群とした. Nasal群:経鼻接種は,マウスをエーテル麻酔後PPVを11.5μg/kg鼻腔に滴下.これをNasal群とした. Trachea群:鼻腔接種が正確に行われているかいなかを比較検討するため,経気管的にPPV投与を行った.すなわちマウスをエーテル麻酔後気管部分を露出し,27ゲージの針にて直視下に投与する群をTrachea群とした. Cont群:上記の3経路からの接種に対するコントロール群として,いずれもPPVの溶解液と同様のフェノールを25μg/kg/生食,各経路から投与した. 以上の結果,Subcuta群とNasal群,Trachea群のいずれもCont群よりも高い抗体価の上昇をみた.その程度はNasal群=Trachea群>Subcuta群>>Cont群の順であった.
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