本研究は、胸部CT(Computed Tomography)画像を用いて、呼吸器疾患における肺病変だけでなく肺外構造を定量的に評価することで疾患特異的な定量的指標を見出し、症状や生理学的、生化学的な他の臨床指標との関係や全身性の影響を明らかにし、さらにモデルシミュレーションを施行することによって形態学からみた疾患の進展様式および病態を解明することを目的としている。本年度は、COPDにおいては、現喫煙者と禁煙者との間で気腫病変の経年変化に相違があり喫煙を継続することで気腫の進行がより大きいことを示し、さらにCT画像を用いたモデルシミュレーションを行うことで肺気腫の進展様式を明らかにした。また、気道内腔の不整性に着目した新たなCT指標の開発に成功した。本法開発の基礎となる気道ファントムを用いた研究についてはCT機器や測定条件による気道指標に対する影響を明らかにし論文投稿中である。次に、本法をCOPDと喘息のCT画像に適用したところ、本指標が両疾患の鑑別に有用であることがわかり、両疾患の病態の相違を明らかにするものとして論文投稿予定である。また、肺非結核性抗酸菌(MAC)症においても同様に胸部CT画像を用いて解析し、同症の気道病変は解剖学的な部位による相違があることを見出し、学会発表を行った。昨年度までの呼吸器疾患と骨粗鬆症との関係に関する研究についてまとめ、学術誌に発表を行った。このようにCT画像解析を通して、形態学からみた呼吸器疾患の病態解明に貢献できる新たな成果を得ることができ、今後のさらなる応用につながるものと考えられる。
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