研究概要 |
本研究は、難治性呼吸器疾患において、Rhoエフェクター分子mDiaの役割を解析し、病態解明や将来の治療法開発に応用することを目標としている。mDia1欠損マウスを、急性と慢性喘息動物モデルに適用して、炎症、線維化への評価を実施した。急性炎症期は、マウスに卵白アルブミン(OVA)をアラムとともに2回感作後、1週間OVAを連日吸入させて発症させ、評価した。気管支肺胞洗浄液(BALF)中において、野生型マウス、mDia1欠損マウスともに、非発症マウスより、好酸球を中心として細胞数が増加していたが、mDia1欠損マウスでは、有意に野生型マウスより総細胞数、好酸球、リンパ球、好中球が少なかった。FACSによる解析では、BALF中のリンパ球に関して、喘息発症mDia1欠損マウスでは、野生型に比較して、Tリンパ球、CD4陽性Tリンパ球、CD8陽性Tリンパ球、Bリンパ球、のいずれも減少していた。また、BALF中のTh2サイトカインであるIL4, IL13も、野生型喘息発症マウスの上昇より、mDia1喘息発症マウスでは軽減されていた。血清OVA特異的IgEを測定すると、発症群では有意に上昇していたが、mDia1欠損マウスの方が、野生型マウスより有意に低値であった。気道過敏性に関してもmDia1欠損マウスでは、野生型より抑制傾向がみられた。一方、慢性炎症期は、OVAの連日吸入を2週間と3週間に延ばして評価し、野生型では、急性期より炎症が徐々に消退傾向にあったが、mDia1欠損マウスでは、炎症レベルは野生型マウスに追いついていき、長期的な炎症抑制は認められなかった。既報では、mDia1欠損マウスでは、T細胞の増殖と遊走能の低下が示されており、本研究では、それが急性のアレルギー性炎症の発症機序に遅れを生じているが、慢性的にはT細胞の遊走能も野生型と追いつくため差がみえなくなる可能性を考えた。
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