研究概要 |
1. 生検検体の免役染色による効果予測性の評価 当科で治療が行われた扁平上皮癌49例と非扁平上皮癌128例について、抗がん剤の効果予測因子であるERCC1、RRM1、TS、class III beta tubulinの免疫組織学的検討を行い、実際の抗がん剤の治療効果との相関を検討中である。生検による微小検体から効果を予測できることが明かとなれば、個別化医療の推進とともに、QOLの維持を指向したがん化学療法の確立が期待される。 2.臨床試験の実施 進行非小細胞肺癌の個別化治療を目的とし、塩酸イリノテカンとEGFR阻害薬(エルロチニブ)併用の第I相薬物動態解析試験を実施した。本試験では、EGFR変異を治療前に検討し、治療効果との相関を検討するとともに、塩酸イリノテカンの副作用の予測のためにUGT(UDPグルクロン酸転移酵素)遺伝子多型の検出を行っている。第II相試験への推奨投与量は塩酸イリノテカン 70 mg/m2, エルロチニブ 100 mgとなった。また、薬物動態の解析では、エルロチニブの血中動態に塩酸イリノテカン は影響を与えないことが明らかとなった。今後は非小細胞肺癌の初回治療後の再発症例に対する2次治療としての有用性を第II相試験によって検証し、肺癌の新しい治療選択が確立されることが期待される。癌の診断時に採取した組織を用い、抗癌剤感受性耐性遺伝子の検討を行い、今後は、治療費、患者の希望(脱毛、吐き気、末梢神経障害)を開発したソフトに入力し、エビデンスにもとづく最適治療を提示する研究へと発展させる。
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