研究概要 |
肺は多様な上皮細胞より構成され、それぞれの細胞が異なった機能を担っていると考えられている。肺の幹細胞研究は混沌としているが、肺および肺癌の幹細胞を明らかにするためにも、個々の肺上皮細胞の成り立ちや機能を調べることが重要であると考える。そこで、本年度は肺上皮細胞を確実に単一細胞に分散するため、各種酵素や手法・機器を用いて単一肺上皮細胞を得る条件を模索検討した。まずは、肺癌と関連の深い肺胞II型細胞、Clara細胞に関して行った。数十個の同一種類の上皮細胞よりRNAを抽出し、SPC,CCIO,GAPDHのRT-PCRを行った。10-5個の細胞では安定したRNAの増幅が認められた。10-5個の細胞からmRNAを増幅し、得られたRNAを定量すると、マイクロナレイを行うために必要なRNA量に達している。最終的には、単一肺上皮細胞でRNAの増幅を行うのが目的であるが、安定して再現性のある単一細胞での効率的なRNAの増幅を得るために、更に工夫をし効率的な方法を確立したいと考える。気道の神経内分泌細胞に関しては胎児期の方が発現細胞数が多く単離・回収を行いやすいため、E14,El6の肺を使用した。胎齢期と成体では遺伝子データの発現因子が異なる可能性があるが、まずは細胞数を確保しやすい胎仔期で手法を確立し、その後その手法を成体から単離した神経内分泌細胞に応用させたいと考えている。また同時に、現段階で安定して増幅できる細胞数(5-10個)を用いてアレイ解析を行い、各肺上皮細胞のプロファイリングを行い、分化に影響を与える可能性のある転写因子、増殖因子を解析していきたいと考える。
|