研究概要 |
化学療法を施行する進行肺癌患者にグレリンを投与するにあたって、血漿グレリン濃度を測定し、副作用やQOLとの関連を検討した。宮崎大学医学部附属病院に入院し、化学療法を施行する進行肺癌患者11症例を対象とした。化学療法のday-1、4、8、11、14にAIA法により血漿アシルグレリン、デスアシルグレリンを測定した。また、アンケート(VASスケール)を用いて食欲、倦怠感、気力、嘔気等自覚症状の程度を評価した。化学療法前と14日後のQOLスコアをEuropean Organization Research and Treatment of Cancer(EORTC),QOL-C30で評価した。これらの自覚症状やQOLスコアとグレリン値との関連を検討した。 症例の背景は、男性6例、女性5例、平均年齢は66歳、肺癌の内訳は非小細胞肺癌III期1例、IV期5例、小細胞肺癌限局型4例、進展型1例であった。 抗癌剤投与から14日間に全症例で体重が減少し、平均で-2.2kgの減少を来した。血漿中アシルグレリン濃度の動態は化学療法前値の平均が8.4±2.4fmol/mlに対してday4で最低値の平均7.0±2.6fmol/mlとなり、その後はほぼ前値に戻った。EORTC QOL C-30で評価したFunctionスコアでは、抗癌剤化学療法によって14日間のうちにスコアが増悪した群と増悪しなかった群に分けると、血漿アシルグレリンが増悪しなかった群で有意に低く(増悪群17.0±7.9fmol/ml vs非増悪群6.3±2.2fmol/ml,p=0.016)、14日間の経過を通しても血漿アシルグレリン値が低い傾向にあった。これは抗癌剤副作用に対するグレリンの抗カヘキシア作用のためと考えられた。QOL増悪群ではグレリンを補充することにより、その改善を得られる可能性が示唆された。
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