研究概要 |
新規の情報伝達物質であるマイクロパーティクル(MP)は活性化白血球や血小板,内皮細胞より放出され,様々な細胞を活性化する炎症性メディエータとして機能する.また血液凝固促進や抗原提示など自己免疫性疾患の病態に関与する可能性が示唆されている. 間質性肺炎(IP)は,その原因として100種を超える病態が存在し,自己免疫性疾患の代表である膠原病においても,IPの合併が認識されている.原因不明の特発性IPも多く,肺局所にはリンパ球,好中球,マクロファージ等の炎症細胞が集積するが,IPの病態形成におけるこれら細胞の役割は全くわかっていない.治療法はステロイドを中心に免疫抑制剤の併用が推奨されてはいるが,何を標的に治療薬を選択するかが不明瞭で,治療効果もエビデンスが得られていないのが実情である. 以上から,IPの診断・治療における新たなアプローチが必要と考えられた.本研究は新規情報伝達物質であるMPについて,IPの病態形成との関連の検討,及び臨床応用・治療へと展開するための研究基盤の確立が目的である.具体的には呼吸器疾患におけるMPのスクリーニング,IPの気管支肺胞洗浄液(BALF)中におけるMPの探索,IPの治療反応性とMPとの関連についての解析を行う.平成22年度においてはIP(特発性および膠原病合併),サルコイドーシス,ニューモシスティス肺炎(PCP)の患者に対し気管支内視鏡検査を実施し,BALFについてMPの解析を行った.MP解析は,MPの発現するホスファチジルセリンに結合するannexin V (AV)を用いたフローサイトメトリー法で行い,BALF中にMPが存在するかどうか検討した.その結果,各病態のBALF中にはMPが存在し,そのBALF中のMP数は,IP,サルコイドーシス,PCPの順に多い傾向を認め,MPが各病態の発症メカニズムの違いを反映する可能性が考えられた.
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