研究課題
新規の情報伝達物質であるマイクロパーティクル(MP)は活性化白血球や血小板、内皮細胞より放出され、様々な細胞を活性化する。また自己免疫性疾患の病態に関与する可能性が示唆されている。間質性肺炎(IP)は特発性あるいは膠原病との合併があり、肺局所にはリンパ球、好中球、マクロファージ等の炎症細胞が集積する。しかしIPの病態形成におけるこれら細胞由来のMPの役割は不明である。本研究は新規の情報伝達物質であるMPについてIPの病態形成にいかに関与しているか、さらには臨床応用・治療へと展開するための研究基盤を確立することを目的としている。具体的には呼吸器疾患におけるMPのスクリーニング、IPの気管支肺胞洗浄液(BALF)中におけるMPの探索、IPの治療反応性とMPとの関連について解析を行う。平成23年度においては、特に膠原病に関連したIP、サルコイドーシス、ニューモシスティス肺炎(PCP)、細菌性肺炎の患者に対し気管支内視鏡検査を実施し、気管支肺胞洗浄液(BALF)についてMPの解析を行った。MP解析はホスファチジルセリンに結合するannexin V(AV)を用いたフローサイトメトリー法で行い、BALF中のMP濃度、細胞数、血清およびBALF中のLDHや白血球が放出する液性因子などの濃度との比較検討を行った。その結果、IPにおけるMPの中央値は約200,000/mLであり、細菌感染症を除くサルコイドージス、PCPに比して高い傾向を示した。さらにIPにおけるBALF中のMP数は、血清LDHとは負の相関を示し、またBALF中の白血球数や液性因子とは相関を示さなかった。顆粒球由来のMPには抗炎症作用があることが報告されており、IPにおけるMPの役割を考える上で重要な知見と考えられた。
3: やや遅れている
解析の対象となる症例数がやや少なく、またBALF中の液性因子等の測定やMPの詳細な性質の検討が不十分である。
さらに症例数を増加させるとともに、BALF中のKL-6等IPの病勢を反映する因子や血清中の可溶因子との比較を行い、MP濃度との関連について検討する。さらに種々の細胞表面マーカーに対する抗体を用いて、BALF中に増加しているMPの性状を明らかにし、IPの病態との関連、とくに抗炎症作用との関連を明らかにする。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Rheumatology
巻: 51(3) ページ: 580-582
10.1093/rheumatology/ker350
Internal Medicine
巻: 50(11) ページ: 1245-1249
10.2169/internalmedicine.50.4879