平成22年度は主に培養細胞を用いた検討と動物実験を行った。ヒト血管内皮細胞(HUVEC)および気道上皮細胞(Bes2b)の培養系を用いて、エンドトキシン(LPS)や腫瘍壊死因子(TNF-α)などの炎症性刺激を加えた際のRap1および関連する分子であるRhoA、Rasなどの発現を検討した。方法としてはリアルタイムPCR法による遺伝子解析とウェスタンブロット法による蛋白レベルでの解析を行った。HUVECでは、LPS投与6時間後にRap1の遺伝子発現が亢進し、RhoA、Rasについても同様に発現の亢進が見られた。TNF-αによる刺激でも同様の傾向であった。これらの遺伝子発現は炎症性刺激12時間後をピークにし、24時間後にはほぼベースラインに復していた。また蛋白レベルでも同様にRap1および関連するRhoA、Rasの発現亢進が見られた。Bes2bでもLPS投与6時間後にRap1の遺伝子発現が亢進し、RhoA、Rasについても同様に発現の亢進が見られ、TNF-α刺激でも同様の傾向であった。次にマウスの気管内にLPSを投与し、肺内の遺伝子発現がどのように修飾されるかを検討した。炎症性刺激後のRap1、RhoA、Rasの発現は、LPS刺激により亢進する傾向にあったが、個体間でのばらつきが大きかった。遺伝子発現を経時的に評価したところ、多くのマウスでLPS投与の4時間後から発現が亢進する傾向にあった。
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