平成24年度は前年度から継続して、siRNAによりRap1の発現をノックダウンした細胞の機能の解析を行った。siRNAをヒト肺線維芽細胞および樹状細胞に導入し、エンドトキシン(LPS)や腫瘍壊死因子(TNF-)などの炎症性刺激を加えた。siRNAを導入した細胞では、Rap1 および関連する分子である RhoA、Ras などの遺伝子発現が減弱しており、LPS刺激後の転写因子NF-Bの活性化や炎症性サイトカイン(TNF-、IL-8など)の発現を検討したところ、両細胞系ともに、siRNAを導入することでNF-B活性化やサイトカイン発現が抑制された。Rap1に対するsiRNAを導入した細胞では、TNF-による刺激を加えても、NF-Bの活性化やIL-6の発現亢進が見られなかった。 アデノ随伴ウィルスベクターにRap1に対するsiRNAを発現させ、マウスの気道内に投与する実験も前年度に引き続き行った。摘出した肺でRap1遺伝子発現が確認できなかったことから、ノックダウンが成立しているものと考えられた。LPS腹腔内投与による敗血症モデルでは、siRNAを含まないウィルスベクターを投与した対照群で肺内のNF-B活性化や炎症性サイトカインの発現亢進を認めた。Rap1に対するsiRNAを含むウィルスベクターを投与したマウスでは、LPS腹腔内投与後のNF-B活性化やサイトカイン産生がやや抑制されたが、肺内への炎症細胞浸潤や肺血管外水分量などの肺損傷の指標についてはデータのばらつきが大きく、一定の傾向は見られなかった。
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