研究概要 |
本研究では、非喫煙者肺がん発生におけるmiRNAの果たす役割を解明すること、EGFR遺伝子変異が果たすmiRNAの発現制御機構を明らかにすることを目的とする。 miR-21は、EGFR遺伝子変異に関したmiRNA発現プロファイルで最も発現の亢進を認めた。また、EGFRのリガンドであるEGFによってmiR-21の発現が亢進され、EGFR-TKI(AG1478)暴露でその発現を抑制することで、miR-21はEGFRシグナルとの関連が示された。さらにmiR-21とEGFRシグナルとの調整機構を解明するために下流のシグナル因子(Akt、STAT3など)との関係について解析を行った。その結果、miR-21の発現をsiRNA を用いてKnockdownを行ってもAkt, STAT3の発現に変動は認めず、さらにPre-miR-21の導入を行い、miR-21を過剰発現させても両者に変動は認めなかった。次に、AktとSTAT3の両因子をKnockdownすることによりmiR-21発現の変動を解析したが、いずれも有意な変化は認めなかった。この結果からmiR-21とEGFRシグナルとの調整機構には、Akt, STAT3以外の他のEGFRシグナルの関与が示唆された。 これまでに肺がん組織検体を用いたEGFR遺伝子変異に関した網羅的なタンパク質発現解析の結果、9個のタンパク質に有意な変動を認めた。今回、EGFR遺伝子変異を認める肺がん細胞株(PC9)と野生型株(A549)との2群間で発現解析を行い、両群間で有意に発現差を認める11個のタンパク質スポットが同定された。そのうち9つのタンパク質が発現亢進し、2つタンパク質が減少していた。これらのタンパク質とmiR-21との関連を調査する課題はあるものの、これらの知見は非喫煙者肺がんに対する新しい治療法開発をもたらす糸口となる可能性が示唆された。
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