本研究は、免疫複合体腎炎におけるTh17/Th1/Th2細胞の役割を解明することを目的としている。研究代表者はTh17、Th1、Th2細胞優位発現マウスを独自に開発し、本研究ではこれらのマウスを用いて、1、実験腎炎系(BSA免疫複合体腎炎)による解析、2、自己免疫腎炎Nrf2KOマウス遺伝背景Th17/Th1/Th2細胞優位発現マウスの解析、3、Balb/c遺伝背景Th17細胞優位発現マウスにおけるIgA高値と腎炎発症の解析の3項目を行い、ヘルパーT細胞の分化制御と免疫複合体腎炎の関係を明らかにする。平成22年度では実験腎炎系であるBSA免疫複合体腎炎による解析を行った。10週齢のTh1/Th2/Th17細胞が優位発現するT-bet過剰発現マウス(Th1優位)、GATA-3過剰発現マウス(Th2優位)、RORγt過剰発現(Th17優位)マウス、および野生型(WT)にBSA腎炎を誘導し、腎機能および腎組織を評価し、腎炎の発症進展を検討した。BSA腎炎を誘導したところ、糸球体肥大、メサンギウム増殖、半月体形成などの所見はRORγtマウス、WTマウスの順で強く、GATA-3では軽度のメサンギウム増殖所見を認め、T-betではほとんど変化はなかった。蛍光抗体法ではRORγt、WT、GATA-3でIgG、IgM、C3のメサンギウム領域および係締壁への顆粒状沈着を認めた。実験終了時(22週齢)尿蛋白はRORγt、WTで増加を認めた。これらの結果より、BSA腎炎はRORγtで最も強く誘導され、BSA腎炎の増悪には、Th17細胞が関与している可能性が示唆された。今後はその機序の解明についてさらに検討する予定である。
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