研究概要 |
ヒト巣状分節性糸球体硬化(FSGS)の秒病変形成分子機序を明らかにする目的で、ポドサイトを特異的に障害する遺伝子変異FSGSモデルマウス(NEP25)を用いて、急激なポドサイト障害を惹起したところ、顕著な蛋白尿とWT1陽性細胞の減少が認められた。それに引き続き、壁側上皮(PEC)の糸球体基底膜に向けての増殖と遊走がみられたが、ここにNotchl,Jagged,HesなどのNotch系シグナル分子の共発現を認めた。RT-PCRにおいても遺伝子レベルでNotch系シグナルの増加を認めたことから、PEC病変形成にNotchシグナルが関与していることが判明した。このマウスで見られた現象は、ヒトFSGSの組織においても同様に認められることが腎生検標本免疫染色法にて明らかになった。また、上皮間葉形質変換(EMT)が起きていることも明らかにした。 次にPEC細胞を用いてTGF-betaによって刺激したところ、PECは有意に遊走性を高め、Notchのinhibitor(GSI)によりこれは抑制された。同時に細胞形質変換を示すsmoothmuscleactinの発現、さらにSnailなどのEMTマーカー遺伝子発現を認めたことから、PECはNotchに依存してEMTと遊走能を獲得することが判明した。 PEC病変は、FSGSの進展に非常に重要と考えるが、その分子背景の一部が明らかになり、この知見をさらに進めて、ヒトFSGSの治療に反映させるべく研究を継続したい。
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