研究課題/領域番号 |
22590878
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高瀬 敦 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (60265684)
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研究分担者 |
菱川 慶一 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (50255460)
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キーワード | 腎臓上皮細胞由来iPS細胞 / 線維芽細胞由来iPS細胞 / NF-kappaB / siRNA Knockdown / TSA処置(HDAC阻害剤) |
研究概要 |
ヒト腎臓上皮細胞由来iPS(hR-iPS)細胞におけるNF-κB活性化、またNF-κB制御による未分化維持・分化誘導について、ヒト皮膚線維芽細胞由来iPS(hF-iPS)細胞と比較検討した。 両未分化iPS細胞は共にNF-κB活性化を認め、未分化マーカー(Oct3/4、NANOG)の発現を認め、feeder細胞とb-FGFを無くした通常血清培地で培養した両分化系iPS細胞においては、NF-κB活性化は低下し、逆に分化マーカー(WT-1、Pax-2)の発現を認めた。以上よりNF-κB活性はiPS細胞の未分化・分化能に働いている可能性が示唆された。 そこでNF-KBを制御するためiPS細胞にNF-κBp65siRNA処置を行った。siRNA処置にてiPS細胞のNF-κB活性をKnockdownする事が可能で、その際の未分化因子の発現は抑制され、逆に分化因子の発現増加を認めた。hR-iPS細胞とhF-iPS細胞との比較検討において、hR-iPS細胞の方が腎臓系の分化系因子の発現が強い傾向にあった。 これらの結果よりNF-κB活性はiPS細胞の未分化維持に必要である事を見出した。またiPS細胞源基の由来元細胞により分化因子の発現に違いがあった事より、エピジェネティックの概念を考慮するとiPS細胞は由来元細胞系へより強く特異的分化する傾向にある事も見出した。 それらを踏まえて、両iPS細胞にエピジェネティックを修飾するTSA処理(HDAC阻害剤)を施し、分化の差異をみたところ、やはりhR-iPS細胞の方が腎臓系の分化系因子の発現が強い傾向にあった。 この研究成果は、iPS細胞の未分化維持・分化誘導研究に新たな進展を導き、今後の新規腎臓再生療法に繋がるものと考えた。 これらの成果の一部を日本腎臓学会学術総会、日本再生医療学会総会などに報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
In vivo研究において、SCIDマウスの腎被膜下への各iPS細胞移植であるが、すべてがテラトーマ形成を認める事は出来なかった。細胞移植の際に腎出血や、細胞注入不足、注入漏れなどが原因と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
In vivo研究において、腎被膜下への各iPS細胞移植による腎臓前駆細胞としての機能評価であるが、テラトーマ形成において手技的に熟練した研究者が、一定の期間に行い、安定したテラトーマ作成が出来る様に細胞移植を試みる。In vitroの研究結果より、NF-κB制御やTSA処置を施したiPS細胞移植は、R-iPS細胞とF-iPS細胞の各エピジェネティックの修飾に過ぎないと考えられ、細胞移植によるテラトーマ作成は処置をしていないiPS細胞を使用する。また同様に障害腎への細胞治療も行う。
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