ヒト腎臓上皮細胞由来iPS(hR-iPS)細胞におけるNF-kappaB(NF-kB)活性化、またNF-kB制御による未分化維持・分化誘導について、ヒト皮膚線維芽細胞由来iPS(hF-iPS)細胞と比較検討した。 両未分化iPS細胞は共にNF-kB活性化を認め、未分化マーカー(Oct3/4、NANOG)の発現を認め、feeder細胞とb-FGFを無くした通常血清培地で培養した両分化系iPS細胞においては、NF-kB活性化は低下し、逆に分化マーカー(WT-1、Pax-2)の発現を認めた。以上よりNF-kB活性はiPS細胞の未分化・分化能に働いている可能性が示唆された。 そこでNF-kBを制御するためiPS細胞にNF-kB p65 siRNA処置を行った。siRNA処置にてiPS細胞のNF-kB活性をKnockdownする事が可能で、その際の未分化因子の発現は抑制され、逆に分化因子の発現増加を認めた。hR-iPS細胞とhF-iPS細胞との比較検討において、hR-iPS細胞の方が腎臓系の分化系因子の発現が強い傾向にあった。 これらの結果よりNF-kB活性はiPS細胞の未分化維持に必要である事を見出した。またiPS細胞源基の由来元細胞により分化因子の発現に違いがあった事より、エピジェネティックの概念を考慮するとiPS細胞は由来元細胞系へより強く特異的分化する傾向にある事も見出した。それらを踏まえて、両iPS細胞にエピジェネティックを修飾するTSA処理(HDAC阻害剤)を施し、分化の差異をみたところ、やはりhR-iPS細胞の方が腎臓系の分化系因子の発現が強い傾向にあった。 この研究成果は、iPS細胞の未分化維持・分化誘導研究に新たな進展を導き、今後の新規腎臓再生療法に繋がるものと考えた。これらの成果の一部を日本腎臓学会学術総会、日本再生医療学会総会などで報告した。
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