研究課題/領域番号 |
22590879
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
丸茂 丈史 杏林大学, 医学部, 講師 (70265817)
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研究分担者 |
平橋 淳一 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70296573)
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キーワード | エピジェネティクス / 糖尿病性腎症 / DNAメチル化 |
研究概要 |
本年度は、糖尿病性腎症モデルでのエピジェネティック異常についてDNAメチル化を中心に解析をすすめた。とくに腎機能悪化に対する新たな治療ターゲットとなりうる、腎症初期に変化するDNAメチル化を解析した。糖尿病性腎症モデルにはdb/dbマウスを用いた。db/dbマウスは5週令から高血糖と肥満を呈しはじめ、やがてアルブミン尿および腎臓組織変化を生じる。本研究では10週令雄性db/dbマウスを用いて検討をおこなった。db/+を対照に、mRNA発現変化が生じる遺伝子をスクリーニングし、約30個の候補遺伝子を選定し、各遺伝子についてCOBRA法によってDNAメチル化の変化の有無を解析した。さらに腎臓細胞をFACSによって近位尿細管細胞とその他の分画にわけ、各集団での解析も行った。 その結果、db/dbマウスでは腎臓全体でnox4遺伝子のbodyおよびpromoterで有意なDNA脱メチル化が生じていることが判明した。ソーティング後の解析ではdb/+、db/dbマウスともに近位尿細管細胞のnox4遺伝子は10%以下と低メチル状態である一方、非近位尿細管分画では50%以上の高メチル状態であり、DNAメチル化が近位尿細管特異的な発現をコントロールしていると考えられた。重要なことに、db/dbマウスでは、db/+に比して非近位尿細管でのnox4 promoter DNAのメチル化が減少していた。さらに、培養尿細管細胞に脱メチル化薬5-aza-cytidineを加えると、TGFbetaによるnox4 mRNA誘導が増強されることが観察された。以上の検討から、糖尿病性腎症でnox4 DNAのメチル化が減少していることが明らかになった。非近位尿細管でのnox4 DNA脱メチル化は、本来発現が低い部位でのnox4 mRNAの増加に関与し、酸化的ストレスの増加を介して腎症進展に関わる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究により、腎臓構成細胞ごとの解析をすることにより、腎臓内でDNAメチル化によって特異的発現が制御されている遺伝子が複数存在することが新たに明らかになった。さらに、糖尿病性腎症でDNAメチル化異常を呈する遺伝子がnox4をはじめ複数得られ、新たな治療開発へむけた基盤になると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、DNAメチル化異常に至るまでにヒストン異常が生じているのか、糖尿病のどの因子が原因となっているか解明し、エピジェネティック異常を予防・治療する足がかりを得たいと考えている。さらに、網羅的な解析も用いることによって、より多くの候補遺伝子を得たうえで、病態に意義のある異常を同定する予定である。
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