研究課題
本年度は、尿バイオマーカーに関しては、収集した急性腎障害症例の経時的な検体を質量分析計で検討した。代表的な経過をたどった3症例の経時的な検体から、発症早期に上昇する分子群、および障害回復期に上昇する分子群を確認した。そのなかで、再現性の高いそれぞれ、2及び1分子をバイオマーカー候補分子とし、分子の特定を試みている。一つ目の分子に関しては、分子特定のための条件設定がすすんでおり、まもなく特定できる予定である。同時に、検体収集も進め16例の経時的な尿検体、約200検体を収集できた。これら検体に対して、十数種類のケモカインを中心とした炎症関連物質の測定を行った。これらの尿中関連物質が経時的に変化する事が確認された。本年度は、それらの結果をさらに臨床との関連から検討すると共に、さらに症例数を増やして検討する予定である。脂肪由来間葉系細胞に関しては、初代培養細胞は紡錘形を呈しており、皮下あるいは腹腔といった由来の違いによる形態の差はなかった。また、初代培養細胞から少なくとも第4世代の継代培養細胞まで同様の細胞表面マーカーの発現を認めた。脂肪、骨細胞及び軟骨細胞への分化能が有り、自己複製能および多分化能を持つ事が示された。尾静脈より投与した脂肪由来間葉系細胞は腎臓には生着しないものの、腎における抗炎症作用を持つことが示された。また、マウス虚血性腎障害モデルにおいて腎のみならず、肺においても炎症細胞浸潤が確認された。これらの成果は、論文化し受理された。今後は、肺にトラップされた脂肪由来間葉系細胞が、いかにして腎での抗炎症作用を示したかも含めて、腎障害時に見られる臓器連関に関してもさらに検討を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
脂肪由来間葉系細胞に関しては、当初の計画以上に進展し、一定の結果が得られたため、すでに論文化した。また、バイオマーカーに付いても、検体収集、測定共に、順調にすすんでいる。網羅的解析における分子同定には若干手間取っている物の、見通しが立ち、検討を進めている。
バイオマーカーに関しては、順調に検討がすすんでおり、本年度は、検体収集の追加と測定をさらに進め、それらの結果を臨床との関連から検討する予定である。網羅的解析に関しては、候補分子の特定の後に、多数の収集検体での検証を行い、その臨床的意義を検証する。脂肪由来間葉系細胞に関しては、可能な限り肺にトラップされた脂肪由来間葉系細胞が、いかにして腎での抗炎症作用を示したかについても念頭に、腎障害時に見られる臓器連関に関しても検討を進める予定である。
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Nephron Extra
巻: 2 ページ: 27-38
DOI:10.1159/000335533
Clin Exp Nephrol
巻: (Epub ahead of print)
DOI:10.1007/s10157-012-0614-6