研究課題
1)近位尿細管特異的オートファジー機能障害マウスにおける検討脂肪酸結合牛アルブミンを連日腹腔内投与し糸球体からのアルブミン漏出を増加させたマウスでの尿細管病変を検討したところ、オートファゴゾームの構成成分であるLC3の腎尿細管細胞内発現が亢進していた。この変化は、加齢マウス、60%高脂肪食で飼育した肥満マウスでは減弱していた。一方、オートファゴゾームの形成に必要なAtg5を近位尿細管特異的に欠損させたマウスでは、Wildマウスに比し、腎障害マーカー・炎症マーカーのmRNA発現が亢進し、腎組織障害が高度であった。また、マウスに投与した蛍光標識アルブミンは、腎尿細管細胞内でオートファゴゾームの構成成分であるLC3と一致して存在した。この結果は、糸球体から尿細管腔へ漏出した蛋白は近位尿細管によって再吸収されオートファゴゾームに取り込まれること、オートファジー誘導の障害は、蛋白尿出現時に尿細管障害を惹起することが示された。2)培養近位尿細管細胞を用いた検討これまでの検討から、培養近位尿細管細胞における蛋白負荷時の障害は、蛋白に結合した脂肪酸が重要な役割を果たしていることが確認されている。そこで、培養近位尿細管細胞を脂肪酸結合アルブミンと共孵置したところ、脂肪酸非結合アルブミンと比してオートファジーの活性化が抑制され細胞障害マーカーが亢進していた。そこで、オートファジー関連蛋白の遺伝子発現をsiRNAにより抑制し細胞内でのオートファジー機構と脂肪酸結合アルブミン負荷時の障害の検討を試みたが、siRNA抑制が安定せず一定した結果が得られなかった。そこで、オートファジーを上流で抑制するmTOR経路に注目し検討を行ったところ、ラパマイシンによるmTOR経路抑制によって、脂肪酸結合アルブミン刺激による細胞障害は軽減した。
2: おおむね順調に進展している
計画予定としていた近位尿細管特異的オートファジー機能障害マウスを用いた検討にて、蛋白尿負荷時の近位尿細管障害は強まること、腹腔内に投与したアルブミンが尿細管のリソゾームで分解されることが確認できた。細胞実験におけるオートファジー関連蛋白の遺伝子発現抑制には難渋しているが、その代案としてオートファジー抑制経路を遮断することにより研究成果をあげている。
肥満、糖尿病、加齢に共通する腎障害の進展機構として、腎尿細管におけるオートファジー障害が関与している可能性が高まった。培養細胞を用いた検討から、このオートファジー機構としてmTOR経路が関与していることが確認されたため、実験動物を用いてmTOR経路抑制によって腎障害進展が抑制できるか否かを確認する。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Exp Diabetes Res
巻: 2012 ページ: 1-12
628978
Free Radic Biol Med
巻: 51 ページ: 1258-1267
10.1016