肥満は腎の予後悪化因子として知られているが、その分子機構は明らかでない。尿蛋白の増加に伴う尿細管間質病変の進展が腎予後に強く影響を与えるとされており、代謝・老化関連疾患との関わりが報告されているオートファジーが腎予後に影響を与える可能性が考えられる。そこで、下記のように実験を行い結果を得た。 実験1)通常食飼育下ならびに高脂肪食を6週間摂取した肥満マウスに腹腔内アルブミン負荷による尿細管間質病変を惹起したところ、 腹腔内アルブミン負荷により肥満マウスでは明らかな尿細管障害の増悪が確認された。 実験2)GFP-LC3-TGマウスを用い、尿蛋白や肥満が尿細管細胞におけるオートファジー活性に及ぼす影響を検討したところ、非肥満マウスではオートファジー活性化が観察されたが、肥満マウスでは確認されなかった。 実験3)Atg5遺伝子を近位尿細管細胞特異的にノックアウトし、近位尿細管特異的オートファジー欠損マウスを作製し、腹腔内アルブミン負荷を行なったところ、肥満マウス同様に尿細管障害の悪化が確認された。 実験4) 培養マウス近位尿細管細胞を用い、脂肪酸結合アルブミンがオートファジーを活性化しうるか、また、RNA干渉を用いたオートファジーの抑制が、脂肪酸結合アルブミン刺激による小胞体ストレス、細胞死に影響を及ぼしうるかを検討したところ、脂肪酸結合アルブミン刺激は、動物実験同様に培養近位尿細管細胞においてもオートファジーを惹起し、小胞体ストレスの増加を伴う細胞死の亢進をもたらした。オートファジーの抑制は肪酸結合アルブミン刺激による小胞体ストレスならびに細胞死の亢進をもたらした。 以上より、尿蛋白増加に伴い腎保護的にオートファジーが誘導されるが、肥満状態ではそれが抑制されており腎機能低下に関与していることが示され、オートファジー誘導が新たな腎疾患治療ターゲットとなる可能性があることが明らかとなった。
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