研究概要 |
糖尿病性腎症例(DN)での尿中カルシウム増加における腎臓でのα-Klotho(rKL)および血中分泌型α-Klotho(sKL)蛋白の臨床的意義,および骨代謝マーカーとの関連性について,ヒトサンプルを用いて検討した. DN(74例)で,空腹時の尿中fractional excretion of Ca(FeCa)値は,IgA腎症例(IgAN)(90例)および無症候性蛋白尿・血尿例(MCD)(26例)に比べ有意に上昇していた.そこで,対象をeGFRが60mi/min/1.73m^2以上の群(軽度腎機能低下群)とそれ未満の群(高度腎機能低下群)の2群に分けて解析すると,軽度腎機能低下群では,IgANやMCDに比べてDNでのFeCa値の上昇がより顕著になったが,高度腎機能低下群では,DNでの有意なFeCaの上昇は認めなかった.また,軽度腎機能低下群では,DNでのrKL発現量は,IgANやMCDに比べて有意に低下していた.そこで,多量変解析(重回帰分析)を行ったところ,FeCaに対する影響因子としてrKL発現量が唯一の有意な相関因子であった.このことから,早期DNでの尿中カルシウム排泄増加の機序にrKLの発現低下が関与することを明らかとした.今後,rKLの低下が,尿中カルシウムの増加に関与する直接的な機序の解明が必要である. DNでは,骨代謝マーカーである骨型アルカリフォスファターゼ活性(BAP)とTRACP-5は,いずれもFeCaおよびsKL量とは有意な相関関係を認めなかった.また,FeCaとsKL量は有意な相関関係を認めなかった,つまり,DNにおけるFeCaの上昇にsKLは直接的に関与する可能性は低く,また,FeCaの上昇が骨代謝に直接関与している可能性は低いと考えられた.つまり,糖尿病での骨代謝異常は,FeCaの上昇に加え他の様々な骨代謝に関与する因子との総合的な解析が必要と考えられた.
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