糖尿病性腎症(DN)のUca上昇に対する腎臓でのα-KLの関与を明らかとするため,α-Klotho蛋白欠損遺伝子改変マウス(KL-/-),同へテロマウス(KL+/-),およびWildマウス(KL+/+)にストレプトゾシン(STZ)を投与し,DNを惹起させ,Uca量を比較検討した. KL+/-マウスでは,腎臓でのα-KL発現量がWildマウスの約半量であったが,DNが惹起されない状態では,両群にUcaの有意な差はなかった.しかし,DNが惹起されると,Ucaは Wildマウスで有意に上昇したが,KL+/-マウスではその上昇がさらに増強した.一方で,KL-/-マウスでは,DNが惹起されない状態で,Wildマウスに比して有意にUca量が高かったが,DNを誘導してもUcaの増加量が有意に増強されなかった. ところで, Transient Receptor Potential Vanilloid 5(TRPV5)は腎臓での遠位尿細管でカルシウム再吸収調節に関与する分子であるが,最近α-KLはTRPV5の活性化・安定化に関与することが報告された.そこで,α-KL発現量とTRPV5の活性について検討するために,TRPV5を発現させたHuman Embryonic Kidney 293(HEK)細胞を用い,様々な濃度で α-KL遺伝子を導入し,カルシウムの取り込みを検討した.同細胞はα-KL発現量に正相関してカルシウムの取り込みが増加した.一方,TRPV5を発現していないHEK細胞では,カルシウムの取り込みに変化はなかった.つまり,α-KL発現量に依存しTRPV5が活性化,遠位尿細管でのカルシウム取り込みが増加すると考えられた. 以上のことから,糖尿病性腎症における尿中カルシウム排泄の増加に,α-KL発現低下が関与し,それはTRPV5の活性化の低下を介するものであることが示唆された.
|