研究課題/領域番号 |
22590896
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
森本 善文 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (90191048)
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研究分担者 |
村垣 泰光 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40190904)
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キーワード | 腎 / TGF-βシグナル / EMT / Trps1 / 線維化 / Smad3 / Arkadia / Smad7 |
研究概要 |
毛髪鼻指節異形成症(TRPS)の原因遺伝子であるTRPS1の腎臓における機能を検索するために、Trps1ノックアウトマウスに片側尿管結紮(UUO)を行うことにより腎尿細管間質線維化モデルを作成してTrps1の発現量が線維化に及ぼす影響について検索した。まず野生型マウス(WT)とヘテロマウス(HT)との間で線維化の程度を比較するためにI型コラーゲンの免疫染色を行うと、HTマウスではその量が有意に増加していた。次にTGF-βシグナルの亢進を疑いリン酸化Smad3抗体での免疫組織化学により、WTマウスに比較してHTマウスで核に陽性を示す尿細管上皮細胞数の増加を示した。このことからHTマウスにおいて腎間質線維化の亢進するメカニズムを検索するため、TGF-βシグナル経路に関与する遺伝子の発現およびタンパク量を検索したところ、HTマウスではSmad7のmRNAがUUOの時間と共に増加したが、タンパク量はそれとは逆に減少した。これはSmad7タンパクの分解系の亢進によるものと考え、プロテオソームのユビキチンカイネースを検索すると、その中でArkadiaのmRNA、タンパク量ともにHTマウスではWTマウスの約2倍に増加していた。さらに尿細管上皮を腎臓から単離培養しTGF-βを添加して上皮-間葉移行(EMT)を検索した結果、培養系においてもUUO腎と同様にHTではWTと比較してリン酸化Smad3が高度に亢進したのと同時にα-SMAの発現は亢進し、E-cadherinの発現は減少した。またArkadiaの発現はHTではWTの約2倍亢進していた。これらの結果から腎尿細管においてTrps1はArkadiaの発現を負に調節することによりSmad7タンパク量を増加させ、Samd3リン酸化をコントロールすることにより線維化を抑制することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腎尿細管におけるTrps1の機能についてTGF-βシグナルとの関係を明らかにできたから。
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今後の研究の推進方策 |
腎尿細管上皮でのEMTに関する細胞内シグナルについて更なる解析を加えていく予定である。
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