高齢化社会を迎えつつあるわが国では、透析導入となる末期腎不全の原因疾患にも大きな変化が現れており、いわゆる慢性糸球体腎炎が減少する一方、加齢性変化を基礎とする腎硬化症~萎縮腎が増加している。また近年、老化の分子メカニズムが徐々に明らかにされ、SIRTファミリー分子による細胞内情報伝達系~転写因子であるNFkB経路の抑制が報告されている。老化腎ではNFkB経路が活性化されており、本研究では遺伝子改変動物を用いて腎組織特異的にIkBdN(安定化IkBα)を発現させてNFkBを持続的に抑制することで、NFkB経路の腎老化における関与を検討する。 初年度の本年は、まずIkBdNマウス、gGT.Creマウス、FSP1.CreマウスおよびNeph. Creマウスを純系SJLマウスに10回以上の戻し交配を行い、遺伝的背景を均一化した。そしてこれらのマウス株を用いて、組織特異的にNFkBが抑制される遺伝子改変マウス3群(gGT. Cre ; IkBdNマウス(尿細管上皮細胞特異的)、FSP1. Cre ; IkBdNマウス(線維芽細胞特異的)およびNeph. Cre ; IkBdNマウス(糸球体上皮細胞特異的))とIkBdNコントロールマウスを得るために交配と作出を進めた。現在までにgGT. Cre ; IkBdNマウス(オス25匹)、FSP1. Cre ; IkBdN(オス9匹)、Neph. Cre ; IkBdNマウス(オス11匹)およびIkBdNコントロールマウス(オス20匹)が長期観察用にエントリーされている。各群25匹を長期観察用に準備し、その後は短期観察用マウスを準備する予定である。この間、交配とケージ管理および尾サンプリングは岡田と井上が、尾サンプルからのDNA抽出とPCR genotypingは船橋(実験助手)が担当した。
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