研究概要 |
高血圧性腎障害(腎硬化症)は、血液透析導入原因疾患の第3位であり、増加の一途をたどっている。慢性透析患者数の増加の原因となっている。腎臓に発現している肝臓型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)が、高血圧性腎障害の進行を抑制することについて、遺伝子改変動物を用いた基礎的研究により明らかにする。 方法:高血圧性腎障害モデルを作成するために、ヒトアンジオテンシンIIを浸透圧ポンプに注入し、野生型(Wt)マウスおよびL-FABP Tgマウスの皮下に植えこみ、3%食塩負荷を行った。血圧測定を1,2,3,4週後に行い、同時に代謝ケージを用いてで採尿し、尿中アルブミン・クレアチニン・L-FABPをELISAで測定した。4週後に腎臓を摘出し、腎組織障害の程度をHE染色/PAS染色を行い評価した。また、腎臓から遺伝子・蛋白抽出を行い、炎症性サイトカインの発現を検討した。 結果:アンジオテンシンII投与および食塩負荷により、Tgマウスにおける腎臓でのL-FABPの遺伝子・蛋白発現は、有意に高値であり、尿中へのL-FABP排泄の増加が観察された。血圧、尿中アルブミン排泄量、腎臓でのMCP-1発現は、アンジオテンシンII投与のWtマウスおよびTgマウスでコントロールに比べ、有意に上昇したが、WtマウスとTgマウスで同程度であった。一方、形態学的検討では、TgマウスでWtマウスより尿細管間質障害の程度が有意に軽減していた。しかし、WtマウスよりTgマウスのほうが、死亡率が高かった。 考察:高血圧による尿細管間質障害モデルを作成するために、アンジオテンシンII投与に加え、3%食塩負荷を行い、著明な高血圧と腎障害を惹起できた。しかし、腎障害の程度が高度であったため、Tgマウスにおける腎保護作用を十分に証明できなかった。
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