研究概要 |
(目的)糖尿病性腎症は、透析導入疾患の第一位であり、医療経済面、患者のQOLの低下など、問題となっている。糖尿病性腎症発症・進展機序にはいくつかあるが、そのなかでも最終糖化産物であるadvanced glycation end products(AGEs)がその受容体であるRAGEと結合することにより細胞障害に働くことが報告されているが、AGEsをターゲットとした治療は未だ臨床応用されていない。近年我々は、細胞傷害性AGEs(AGE2)がメサンギウム細胞に作用し、基質の増加や細胞肥大に関与することを報告した。今回そのAGE2と特異的に、かつ強力に結合するAGE-DNA aptamerを作製し糖尿病腎症進展に対する抑制効果について検討した。 (方法)ヒト糖尿病性腎症の組織を用いてAGE2の染色を行ったところ、結節に一致して優位に過剰に染色されていた。RAGEの発現については染色性が低下していたため、AGE2の除去を目的に実験を行った。8週令の自然発症2型糖尿病モデルマウス(KKAy/Ta)にcontrol-aptamer(Ctrl-A)とAGE-aptamer(AGE-A)を浸透圧ポンプにて腹腔内に投与し、16週令の時点での腎機能、尿中アルブミン排泄(UAE)、組織学的変化について検討した。 (結果)AGE-A群はCtrl-A群と比較して糖尿病由来の腎機能低下とUAEを有意に改善した。(BUN; 33.1+/-12.6vs27.5+/-1.7mg/dl, p<0.05, Cr; 0.15+/-0.061vs0.09+/-0.003mg/dl, p<0.01, UAE; 709+/-43vs234+/-21mg/gCr, p<0.01)。さらに、AGE-A群は、Ctrl-Aと比較し糸球体硬化、肥大を有意に改善した。 (結論)AGE-2をターゲットとしたaptamerは糖尿病腎症の進展を抑制しうる可能性が示唆された。
|