研究課題
高血糖、老化や炎症に深く関与している終末糖化産物Advanced glycation end products(AGEs)の蓄積や、細胞への直接的な作用が、病態の進行に深く関与していることが報告されている。さらにAGEsがReceptor for AGEs(RAGE)と結合することにより細胞シグナル伝達を介して腎症発症進展に関与することから、RAGEを調節するコンパウンドの開発が重要である。核酸は抗体と比較し副作用が少なく、安価に、そして大量に精製できるため、抗体医薬に替わる次世代分子標的薬として注目されている。短鎖化された核酸には、その構造的な特性から、標的分子にぴったりと結合できるもの(アプタマー)が存在する。我々はAGEsに特異的に、そして強力に結合するAGEs-DNAアプタマーを作製し、糖尿病性腎症・網膜症治療への効果を検証している。2型糖尿病モデルマウスにAGEs-DNAアプタマーを投与したところ、糸球体AGEs蓄積、メサンギウム基質の増加・腎機能障害・アルブミン尿がいずれも著明に改善することを見出している。そこで、次世代分子標的薬としてのRAGEアプタマーに着目し研究を行った。SELEX法により、RAGEアプタマーの同定を行うにあたり、ヒトRAGE蛋白を吸着させた固層化カラムを作成した。得られたRAGEアプタマーとAGE-2(Toxic AGEs)とのbinding assayを行ったが、結合率はさほど高くなく、またヒトメサンギウム細胞にToxic AGEを100μg/mlにて添加し、RAGEアプタマーがTGF-βやCTGFなどのprosclerotic factorの発現増強を抑制するかについて検討したが、結果としては有意な抑制は見られなかった。現在はさらなる結合率の高いRAGEアプタマーの同定に向けて研究を進めていく必要がある。
3: やや遅れている
同定したRAGEアプタマーの効果が不十分であり、結合率が低いことが原因であった。SELEXの回数を増加させること、また、バッファーの調節により、さらに結合率の高いアプタマーの回収が可能となっており、今後は実験の進展に期待がもてる。
まずはAGEsと結合率の高いRAGEアプタマ「の同定が急務である。そのための対策は現在進んでおり、SELEXの方法についても独自に発展させている。結合率としては10^<-9>Mを目指している。動物モデルに関しては、従来通りのモデルを考えているが、RPGNに関してはマウスのバックグラウンドの影響か、半月体形成を呈していないため、マウスのバックグラウンドの変更や検討が今後必要となる可能性がある。
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