研究概要 |
われわれは幼若期からの食塩過剰摂取が不可逆的な腎障害を惹起・重篤化して、成人期の高血圧につながる可能性を示し、そのメカニズムとしてのミネラルコルチコイド受容体(MR)刺激状態を提唱してきた(Kawarazaki H, Andn K,et al. Nephrol Dial Transplant 2010;25:2879;Kawarazaki H,Ando K,et al. Am J Physiol Renal Physiol.2011;300:F1402).そこで、食塩高血圧は肥満高血圧とそのメカニズムにおいて共通点がある(Ando K,et al. Free Radic Biol Med.2009;47:213)ことから、小児肥満における高血圧について検討を行うべく、幼若(3週齢)ならびに成人期(10週齢)の正常ラット(Sprague-Dawleyrats)に対して高脂肪食負荷を行い比較したが、食餌性の肥満は程度が軽く、血圧で差を見いだせず、腎障害も認めなかった。さらにZucker肥満ラットにおける高脂肪食負荷も片腎摘を行っても腎障害を認めなかった。実験プロトコールを変更し、Dah1食塩感受性(Dah1S)ラットとZucker肥満ラットを交配して作成したDahlS肥満ラットで検討を行った。Dah1S肥満ラットはDah1Sラットに比べて通常(0.5%)食塩食で幼若期から肥満、糖代謝異常、脂質代謝異常(特に血清中性脂肪が著明増加)、高血圧を呈し、腎機能障害が顕著であった。食餌量制限(約60%に摂取量を減少)でこれらの改善を認めた。さらに、Dah1S肥満ラットは著明な低レニン血症を認めることから、食塩貯留があり、これが高血圧ならびに腎機能障害に大きな役割を果たしている可能性が考えられた。実際、低塩(0.05%)食にすると高血圧、腎機能障害の改善を認めた。なお、Dah1S肥満ラットでは血漿アルドステロン濃度はDah1Sラットに比べて低下しているが、血漿アルドステロン/血漿レニン活牲比をとると、著明に上昇しており、このモデル動物ではアルドステロン産生増加があり、これはこれらの異常の一因であると考えられた。このモデル動物で副腎重量の増加があることも、この仮説を支持する。今後は高アルドステロン薬の投与などを行い、さらに検討を進める予定である。
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