研究課題
腹膜透析患者における腹膜組織および腹膜透析排液中のpleiotrophin (Ptn)を検討した。さらに腹膜透析における意義を探求するために、遺伝子改変動物(Ptn KOマウス,Ngal KOマウス)を用いて、ヒビテン(CG)による腹膜線維症モデルマウスを作製し、その分子メカニズムを検討している。In vitroにおいては培養腹膜中皮細胞における意義を検討する。(1)Ptn KOマウスを用いた腹膜線維症の検討Ptn KOマウスにCGにより腹膜線維症を惹起したところ、CD3陽性T細胞浸潤数が有意に低下していた。また、IL-1beta,TNF-alpha発現が低下しており、炎症が軽度であることを示した。これらのことより、Ptn KOマウスでは炎症機転が軽減している可能性が考えられる。また腹膜平衡機能検査では、CGによる腹膜透過性の亢進がPtn KOマウスでは低下しており、PTNが透過性亢進に関与する因子であることを示した。培養腹膜中皮細胞では、PTNは細胞増殖、遊走に関連する因子であることを示した。(2)Ngal KOの腹膜線維症における意義本研究では被嚢性腹膜硬化症の前駆病変としての腹膜の炎症・線維化とNgalの関係について検討した。腹膜透析排液中の補正Ngal濃度は、透析期間と正の相関を示した。マウス腹腔内にCGを注入し腹膜線維症を惹起すると、腹膜組織におけるNgal発現が亢進すると共に、Ngal KOマウスとコントロールマウスにおいて腹膜の炎症・線維化の程度に明らかな差異を認めた。以上より腹膜透析排液中のNgal濃度は腹膜の微小炎症・線維化のバイオマーカーとして有用である可能性があること、またNgalは腹膜の線維化において重要な役割を果たすことが示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
Ptn KOマウスにCGを投与し、PTNの詳細な機能的意義の検討が完了し、Kidney International誌に掲載された。Ngal KOマウスにおいても興味深い知見が得られている。
今後、Ngal KOマウスを用いたCGによる腹膜障害の機序を解明する。またヒトサンプルの数を増やし、腹膜透析排液中のPTN、NGALの濃度測定を行い、統計的な解析を行っていきたい。
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Kidney International
巻: 81 ページ: 160-169
10.1038/ki.2011.305
http://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~med2/index-jp.html