研究概要 |
本態性高血圧は複数の遺伝子と環境因子が複合して発症に関与しているが、その環境要因のひとつとしてストレスの重要性が古くから指摘されている。SHRSPは飼育条件によって脳卒中発症頻度が変化するなど、ストレス感受性の高い高血圧モデルであることが知られている。我々は、このSHRSPにおいて第1染色体に高血圧遺伝子の存在する領域を見出し、正常血圧のWKYラットをもとに、この領域だけをSHRSPのゲノムと組み換えたChr1コンジェニックラット(WKYpch1.0)において、種々のストレスに対する交感神経系の反応性が亢進することを見いだした。 本研究では、この結果を踏まえ、新たに作成したさらに狭い領域をもつコンジェニックラットを用いて①そのストレス反応性を評価するとともに、②中枢において交感神経活性制御にかかわる神経核での遺伝子発現解析、sequence解析を通じて、候補遺伝子を絞り込むことを目的とする。 昨年度の研究により、ラット第1染色体上の約1.8 Mbpの領域に責任遺伝子があることが明らかとなったが、この領域内にある有力な候補遺伝子であるPhox2, Ship2を含むより小さな染色体領域をターゲットとする新たなコンジェニックを作成し、そのストレス感受性を検討した。また、これらの遺伝子発現や蛋白をコードする部分の配列の相違についてもSHRSPと対照ラットであるWKYとの間で比較検討した。その結果から、この2つの遺伝子はストレス感受性の責任遺伝子候補からは除外できることが明らかとなった。今年度はさらに狭めた候補領域に存在する10個あまりの遺伝子について、脳幹のおける発現と遺伝子内の変異の有無を検討した。その結果、ひとつだけ、蛋白質のtruncationを生じるSHRSPに特異的な変異を持ち、脳幹での発現が確認できる遺伝子が同定でき、これを候補遺伝子として現在機能解析を実施している。
|