研究課題
腎組織障害として、腎エネルギー代謝の観点からとく尿細管・間質病変が酸化ストレス、ミトコンドリアストレスの結果惹起される可能性が予想される。まず、エネルギー代謝の面では、Na/P cotransporter IIのpromoterを用いてSirt1を近位尿細管(S1+S2セグメント)に導入し、Sirt1の過剰発現マウスを作成した。このマウスが妥当性を有することを証明するため、Sirt1の免疫組織染色を行ったところ、近位尿細管細胞にのみ発現が亢進していた。酸化ストレス亢進状況をシスプラチン投与によって行ったところ、近位尿細管特異的Sirt1過剰発現マウスでは、腎機能として血清クレアチニン値の上昇が抑制され、また、組織所見の障害も明らかに抑制された。さらに、組織内の酸化ストレスマーカーのひとつである4-hydroxy-2(E)-nonenal(4-HNE)の産生が低下していた。この変化とともにcatalase, peroxisome proteins (PMP70), peroxisome acyl-CoA oxidase (ACOX-1)や、ミトコンドリアの)PAR-γ-cofactor-1α(PGC-1α),medium-chain acyl-CoA dehydrogenase(MCAD)の低下が抑制された。一方で、カロリー制限によるSirt1の誘導を行い、シスプラチンによる障害抑制を検討したところ、同様の結果が得られた。今後、昼間および夜間の生体全体としてのエネルギー消費量の測定を行うと共に、腎臓におけるATP、UCP-2の変化やミトコンドリアの形態・サイズを、昼間および夜間別に評価する。また飢餓遺伝子が日内周期リズムを調節するとの関連性が存在することより、SIRT1、FOXO、PPARγの日内周期リズムの変化についても検討を行う。最後に、腎におけるCKDの進展による時計遺伝子(BMAL、CLOCK、DEC2など)のRNA発現の変化を検討する。
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The Keio Journal of Medicine
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