研究概要 |
最近、代謝・寿命と関連する因子であるSIRT1が日内周期リズムを制御する遺伝子(PER2)を調節すると報告(Asher G,et al,Cell 134:317-28,2008)されていることより、日内周期リズムと代謝調節との関連が注目される。申請者らのグループは、すでに腎尿細管において、SIRTlが腎保護的に作用することを示したが(Hasegawa K,Wakino S,Hayash K,et al,J Biol Chem 285;13045-56,2010)、この機序の一端として代謝を抑制し過剰な酸化ストレス負荷を除くとの従来の考え方に加えて、腎臓に対する安静周期の形成が腎保護作用に貢献する可能性も十分に推察される。さらに、マウスにおけるストレプトゾシン誘発性糖尿病性腎症の発症において、近位尿細管のSirtl発現低下が起こり、それに伴い糸球体上皮におけるclaudin-1の発現増加ならびに蛋白尿が出現する。一方、近位尿細管にShtlを過剰発現させたマウスに対して、ストレプトゾシン誘発性糖尿病を作製すると、糸球体上皮におけるSirt1の発現は維持され、それに伴いclaudin-1発現亢進の抑制、ならびに蛋白尿の抑制が観察された。 生体は日内周期リズムを有し、また蛋白尿の日内リズムが推測されることより、今後時計遺伝子群(PER2など)の変動とともに、Sirt1ならびに蛋白尿の変動との関連を評価する。
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今後の研究の推進方策 |
培養ヒト近位尿細管細胞(PTEC)にDec2のdeletion mutantを導入し(Fujimoto K,et al,Int J Mol Med l9;925-932,2007)日内周期リズム遺伝子発現を抑制した状態で、H_2O_2による酸化ストレスやCKDでのuremic toxinの1種であるmethyl-glyoxal(MGO)の細胞障害作用を見る。一方、SIRT1はhistone deacetylase(HDAC)作用を有するが、その抑制薬であるtrichostatin AによるSIRT1の抑制が時計遺伝子(Dec2、BMAL、Perなど)発現に与える影響ならびに最終的な細胞死への作用を検討する。これに並行して細胞におけるエネルギー代謝としてUCP-2、ATP産生を比較検討し、摂食・寿命系と日内周期系との関連を見たい。
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