本研究の目的は脊髄小脳変性症6型(SCA6)の病態発症機構として、プルキンエ細胞のCa_v2.1チャネル蓄積に伴うカルシウムダイナミクス異常に着目し、既存・新規SCA6マウスモデルの解析を通じて変異Ca_v2.1チャネルの輸送・分解・蓄積の異常及びその機構を明らかにし、病態生理学的意義を明らかにすることである。本年度の主な成果は以下の通りである。 (1)SCA6-MPI-118Q KIマウスプルキンエ細胞質内封入体はcathepsin BやLIMP2などのリソゾームマーカーと共局在したが、電顕上オートファゴソームの増加は認められずまたオートファジーの活性化のマーカーであるLC-II分子発現の変動は認められなかった。これらの結果はプルキンエ細胞封入体形成にエンドリソゾーム系が関与していることを示唆するものと考えられた。 (2)変異Ca_v2.1発現の経時的変化や蓄積の過程をin vivoで明らかにするため、蛍光物質(Venus)を変異Ca_v2.1のC末端に融合させた蛍光レポーター(MPI-118Q-Venus)KIマウスの作製をすすめた。本年度はターゲティングコンストラクトの作製から相同組み替えES細胞の同定・マウスblastocystへの相同組み替えES細胞の注入を行ない、キメラマウスの作製を終えた。 (3)cathepsin B KOマウスとSCA6 KIマウスとの交配により、2重変異(DMT)マウスを作製し、その行動学的・病理学的解析を開始した。現在までのところ、ロータロッド解析にてDMTマウスはSCA6 KIマウスと比較して運動機能障害が重篤となる傾向を認めている。
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