研究課題/領域番号 |
22590925
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐藤 俊哉 新潟大学, 脳研究所, 助教 (90359703)
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キーワード | 脳神経疾患 / 筋萎縮性側索硬化症 / TDP-43 / 疾患モデル / 初期胚発生 |
研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子であるTDP-43の生理的機能を解析するため、TDP-43コンディショナルノックアウト(cKO)マウスを作成し、初期胚および神経細胞における機能を中心に検討した。 まずTDP-43ヘテロ欠損個体(Tardbp^<+/->)を解析したところ、多くの組織でTDP-43mRNAの発現レベルが回復し、自己発現制御機構(オートレギュレーション)の存在が示された。しかしヘテロ欠損個体由来の未受精卵では、この自己発現制御機構が働かないためにハプロ不全となっており、このTDP-43mRNAの減少が、その後の初期胚発生を遅延させる原因と考えられた。そこでRibo-SPIA法を用い、未受精卵の全mRNAを増幅し、GeneChipによる発現プロファイリングを行ったところ、TDP-43の減少に伴って発現量が変化する複数の候補遺伝子(Tbcld1等)を得た。この発現変化について、定量的RT-PCR法により確認を進めている。 次にTDP-43のホモ欠損個体(Tardbp^<-/->)が胎生致死であることから、3系統のTDP-43cKOマウス、すなわち神経特異的KO (NSE39-Cre)、前脳特異的KO (Emx1-Cre)、運動神経特異的KO (VAChT-Cre.Fast)を作成して解析を進めた。解析の中心となる神経特異的KOが、生後10~13日齢に死亡するため、生後8日齢を解析対象とした。まずALS病態との異同を検討するため、運動神経のゴルジ体を立体的に再構築して容積を推定したところ、神経特異的KOマウス(Tardbp^<flox/flox>、NSE39-Cre^+)ではゴルジ体の容積が半減し、ニッスル染色でもゴルジ体の崩壊が認められ、ALSの初期変化であるクロマトリーシスとの相関が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TDP-43ヘテロ欠損個体由来の未受精卵が、その後の発生遅延を生じる原因として、TDP-43のハプロ不全を証明し、TDP-43の下流に存在するmRNAの変化も確認している。またTDP-43コンディショナルノックアウトマウスの作成も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
TDP-43の生理的機能を解明するため、定量的RT-PCR法による候補遺伝子の絞り込みを行い、TDP-43が制御している遺伝子群の同定を進める予定である。 TDP-43コンディショナルノックアウトマウスは、TDP-43の生理的機能の解析に有用である。しかし運動神経のみならず多くの神経細胞においてもTDP-43が必須であることが確認され、疾患モデルという観点からは、新たなALSモデルマウスの開発も必要であると考えられた。
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