本研究は、2009年に世界に先駆けて論文報告したウエルニッケ様脳症の病態解明を目的とした。この疾患は、ウエルニッケ脳症と極めて類似する臨床特徴をもち、チアミントラスポーター2をコードするSLC19A3遺伝子変異による遺伝性のビタミンB1代謝異常による神経疾患である。本疾患の病態解明を行うため、SLC19A3遺伝子変異をもつトランスジェニックマウスを作製し、陽電子放射断層撮影(PET)による脳機能画像解析や行動科学による評価、培養神経細胞を用いチアミン代謝関連蛋白とチアミントラスポーターとの相互作用の生化学的解析を行った。遺伝子改変したホモ接合体マウスは胎生期に死亡した。対象マウスをヘテロ接合体マウスに変更し脳機能解析を行ったが、PET解析では野生型マススと同様のグルコース代謝率を示した。マウスの脳機能画像解析および培養細胞の実験を進める過程で、本疾患と同様な遺伝性代謝性神経疾患をモデルとして解析を行いその成果を論文報告した。今後、ヘテロ接合体マウスを用いて、ビタミンB1欠乏下での脳機能画像検査検討、ホモマウスの脳組織標本を用いて病理学的および生化学的な解析を継続する予定である。
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