研究課題/領域番号 |
22590928
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川頭 祐一 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (40569779)
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研究分担者 |
飯島 正博 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, CEO特任助教 (40437041)
小池 春樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (80378174)
祖父江 元 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20148315)
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キーワード | 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP) / Intravenous immunoglobulin(IVIg) / 治療反応性 / 軸索機能障害 / 一塩基多型(single nucleotide polymorphism,SNP) / axon-glial interaction |
研究概要 |
慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy, CIDP)は、四肢の運動感覚障害を特徴とする慢性ないし再発寛解性の難治性末梢神経疾患である。治療には経静脈免疫グロブリン(intravenous immunoglobulin, IVIg)やステロイド、血液浄化療法などの免疫療法の有効性がランダム化比較試験で報告されている。そのなかでIVIgは血液浄化療法より簡便に施行が可能であり、長期的な副作用はステロイドより少なく、さらに治療後の効果判定に要する期間が短いなどの理由から、国内外では第一選択となっている。ただしIVIgは輸血製剤であり、安全性の確保と必要性の確認が他剤と比較してより強く求められる薬剤であることが指摘されている。またCIDPの疾患特性から仮に有効であっても将来の再発に対して再投与が必要となることがあり、さらに近年は一定の割合で治療に反応しないIVIg non-responderの存在が指摘されている。我々はCIDPへのIVIg治療反応性の規定因子やIVIgの作用機序の解明を目指しており、過去には国内における有病率/発症率の算出や、IVIg治療反応性の臨床規定因子として軸索機能障害の合併の重要性を明らかにしてきた。当該年度は、軸索関連分子をはじめとする一塩基多型(singlen nucleotide polymorphism, SNP)解析から、axon-glial interactionにかかわる分子のSNPハプロタイプがIVIg治療反応性に有意に相関することを明らかにした。さらにIVIg治療反応性別の生検神経を対象にした遺伝子発現解析からIVIg responderではILsやTNFなどの液性因子がnon-responderに対し遺伝子発現レベルで有意な亢進を示すことを明らかにした。これはIVIgや副腎皮質ステロイドなど通常の免疫療法への治療反応性を支持する結果であり、今回治療反応性にかかわる遺伝子をのせた治療反応性予測チップの開発に結びつく知見といえる。このように本研究は個別の症例に適切な治療法の選択や、治療反応性の予測に有用であり臨床に還元が可能な成果である。今後は症例数を増やして関連遺伝子の絞り込みをさらに進めるとともに、ヒト由来試料だけでなく実験動物への脱髄モデルの導入を試みることで脱髄を機転に進行する軸索障害機序の解明を目指す予定である。
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