研究課題/領域番号 |
22590928
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川頭 祐一 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (40569779)
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研究分担者 |
飯島 正博 名古屋大学, 医学系研究科, COE特任助教 (40437041)
小池 春樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (80378174)
祖父江 元 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (20148315)
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キーワード | 脱髄 / 末梢神経 / 軸索障害 / 治療反応性 / チャネル / axon-glial interaction / TAG-1 / CIDP |
研究概要 |
本研究は、難治性疾患とされる慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(以下CIDP)やシャルコー・マリー・トゥース病(以下CMT)などの慢性進行性の脱髄性末梢神経障害の治療抵抗性に関与する臨床病理的な要因である一次性の軸索障害機序について、axon-glial interactionに着目した病態解明を行った。Axon-glial interactionに関与する構造としてはランビエ絞輪(node)からjuxtaparanodeに分布する分子群の重要性が指摘されているが、これらの分子の発現および分布の変化と治療反応性や予後との関連性は今まで明らかにされていないことから独創的な研究といえる。 CIDPの病変部神経の病理学的特徴として活動性の節性脱髄や再髄鞘化、周膜下の浮腫が知られているが、これらは高度のonion-bulbを特徴とするCMTなどの末梢神経病理所見と比較して臨床的重症度と解離して軽度にとどまるのが特徴である。その反面、CIDPの電気生理所見は高度の伝導遅延や遠位潜時の延長が必発であり、器質的障害の前の段階である機能的障害の段階が存在する可能性が示唆されている。我々はヒト生検腓腹神経のときほぐし標本を作製し、各種分子(チャネル、TAG-1, CNTN1, Caspr, Caspr2など)の分布と発現を免疫組織学的により解析した。これらは光顕レベルの形態が保持されているにもかかわらず、nodeにおけるチャネルの発現変化が観察され、正常例に比べて著明な低下を示した。また別のinternode側に分布するチャネルの発現を支配するTAG-1をノックアウトした実験動物を用いた解析から、homologousにTAG-1がノックアウトされた場合、顕著な出産効率の低下とともに、出産後も明らかな発育不全が惹起されることを確認した。このことからTAG-1をはじめとするaxon-glial interactionにかかわる分子は主に発生段階でチャネルを介して機能を発現するとともに、脱髄後の修復機転に対しても重要な機能を有することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト生検神経のときほぐし標本および、OCT包埋凍結サンプルの両者において、免疫組織学的手法による各種分子の分布を視覚化する手法を確立した。また、TAG-1ノックアウトを行った実験動物についても効率的にgenotypingする手法を採用するとともに、末梢神経および中枢における標本を用いたwesternublottingにより分子の神経特異的な分布を確認するとともに、自己免疫性末梢神経炎を導入しての臨床病理学的解析を施行した。
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今後の研究の推進方策 |
すでに特異的な末梢神経炎をきたす候補ペプチドを2種類作成し、実験的自己免疫性末梢神経炎(EAN)の誘導を行っている。これは正常とノックアウト動物の脱髄モデル惹起による行動解析の差異と、脱髄性末梢神経疾患の難治化、すなわち軸索障害機転の病態解明に大きく寄与することが期待できる。ただしTAG-1は比較的週齢の浅い発生段階で重要な機能を有することがこれまでの検討から示唆されており、自己免疫性末梢神経炎を誘導する効率的な週齢を明らかにするため、現在追加実験を行っている。問題点としてはhomologousなノックアウトマウスの出生率は非常に低いことから、目的とする表現型を有するマウスの確保にはかなりの労力が必要と予想される
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