研究課題/領域番号 |
22590933
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
浦上 克哉 鳥取大学, 医学部, 教授 (30213507)
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研究分担者 |
谷口 美也子 鳥取大学, 医学部, 助教 (50335527)
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キーワード | アルツハイマー病 / 脳神経疾患 / 糖鎖 / 診断マーカー |
研究概要 |
本年度は、アルツハイマー病(AD)のトランスフェリンと新規糖タンパクの糖鎖量について、経時的な変化を追跡するとともに、それぞれの糖鎖異常部位の解析を行った。 トランスフェリンの糖鎖は、髄液中・血液中ともに、同一患者の病態が進行した患者でもシアル酸量と病態の進行とは関連がないことが示唆された。臨床症状との関連、脳内の病態を示唆する髄液中のアミロイドβ1-42(Aβ1-42)、リン酸化タウ(p-tau181)のいずれとも相関がなく、これらの病態とは別の機序で起こっている変化であることが示唆された。一方新規のタンパクでは、糖鎖量は髄液中のp-tau181とは関連が見られなかったがAβ1-42と相関しており、経時的にAβ1-42の変化が少ない症例では糖鎖量の変化は見られなかったが、顕著に悪化している症例では糖鎖量が低下しており、個の糖タンパクの糖鎖の変化はAβ過剰産生の機序に関連して引き起こされている変化であることが示唆された。この変化は血液中の糖鎖量でも同じ結果が得られ、ADでの病態の変化を血液でモニターできる診断マーカーとなり得ることが判った。 また、現在それぞれのタンパクの糖鎖構造を解析する準備を行っている。新規糖タンパクは、LC-MSにより少数例の血液中糖鎖の解析を行ったが、ADでは高い確率でマンノースの数が異なる糖鎖構造が検出され、マンノースの異常があることが示唆された。また、トランスフェリンについては糖鎖解析には至っていないが、シアル酸を付加するシアリルトランスフェラーゼの血中濃度を測定すると、対照群に比べて有意に減少していることが判り、糖鎖付加の機序に異常がある可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
糖鎖の解析が遅れている。各タンパクの精製がうまく行かず、時間がかかってしまった。最終的に免疫沈降やSDS-PAGEなどの組み合わせによってかろうじて少量精製することができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、イオン交換クロマトグラフィーの準備を進めている。トランスフェリンは先行文献もあり、比較的容易にタンパクの大量生成が可能であると思われる。また、学内でLC-MSを使用できる準備も進めており、今後は短時間で解析が可能になると期待できる(現在までは委託だった為)。
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