研究概要 |
SDラットからの初代培養細胞を用いたロテノン神経障害およびアストログリアの関与 SDラット中脳神経細胞と中脳アストログリアの共培養系および中脳神経細胞と線条体アストログリアの共培養系に,それぞれロテノンを曝露し,アストログリアのマーカーであるGFAPで染色した.線条体アストログリアはロテノンの濃度依存的にGFAP陽性シグナルの増強がみられるのに対し,中脳アストログリアではロテノン曝露によるGFAP陽性シグナルの増強は認められず,むしろ減少傾向があった、線条体アストログリアあるいは中脳アストログリアの単独培養系にロテノンを24時間曝露すると,線条体アストログリアでは細胞外グルタチオン量の増加がみられたが,中脳アストログリアでは細胞外グルタチオン量に変化はみられなかった.また,ロテノン曝露6時間後のミトコンドリアの活性をMito Trackerで検討したところ,線条体アストログリアではロテノン曝露により,Mito Trackerのシグナル増強がみられたが,中脳アストログリアではむしろ減少傾向がみられた.さらに,ロテノンを曝露した線条体アストログリアあるいは中脳アストログリアの培養液を中脳神経細胞単独培養系に添加したところ,ロテノン曝露線条体アストログリアからの培養液添加ではチロシン水酸化酵素(TH)陽性細胞数に変化はみられなかたが,ロテノン曝露中脳アストログリアの培養液添加ではTH陽性ドパミン神経細胞数が有意に減少した. メタロチオネインノックアウトマウスからの初代培養細胞を用いたロテノン神経障害およびアストログリアの関与 メタロチオネインノックアウトマウス(129S7/SvEvBrd-Mt1tm1Bri Mt2tmlBri)からの中脳神経細胞単独培養系,中脳神経細胞と中脳アストログリアの共培養系および中脳神経細胞と線条体アストログリアの共培養系に,それぞれロテノンを曝露した.中脳神経細胞単独培養系では,高濃度ロテノン曝露によりTH陽性ドパミン神経細胞数の減少がみられたが,低濃度ロテノン曝露では変化がみられなかった.一方,中脳神経細胞と線条体アストログリアあるいは中脳神経細胞と中脳アストログリアの共培養系では低濃度ロテノン曝露であっても有意なTH陽性ドパミン神経細胞数の減少がみられた. 以上の結果より,ロテノンによるドパミン神経毒性発現には中脳アストログリアから分泌される何らかの分子が関与していること,抗酸化分子であるメタロチオネインがロテノン神経障害に関与することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,研究目的であるロテノン曝露によるアストログリアにおける抗酸化機構に関わる分子の発現変化およびアストログリアでの抗酸化機構の障害と神経障害の関係について検討し,ロテノン曝露により抗酸化分子であるグルタチオンの細胞外への放出とドパミン神経障害との関連性,およびメタロチオネイン欠損によるアストログリアの抗酸化機構の障害によりロテノン誘発神経障害が増悪されることを見出した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,中枢でみられたロテノン誘発神経障害におけるアストログリアから放出されるグルタチオン,メタロチオネインの関与を,腸管神経系において確認するとともに,初年度に認めたロテノンによるin vivoにおける腸管神経叢および中脳神経細胞の障害の発現機構を明らかにする.
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